はじめに
こんにちは、みなさん!今日は看護師の業務に欠かせないインシデント分析についてお話しします。インシデントが発生したとき、それをどのように分析し、日常の業務に活用するかはとても大切ですよね。そこで、今回は「SHELL分析」と「P-mSHELL分析」という2つの手法をご紹介します。これらの手法を使うことで、インシデントの原因をしっかりと理解し、再発防止策を立てることができます。それでは、一緒に見ていきましょう\(^o^)/
SHELL分析とは?
まず、SHELL分析についてお話しします。SHELL分析は、インシデントや事故の原因を4つの要素に分けて分析する方法です。この4つの要素は、Software(ソフトウェア)、Hardware(ハードウェア)、Environment(環境)、Liveware(人間)です。各要素がどのように相互作用しているかを解析することで、インシデントの根本原因を特定し、再発防止策を講じることができます。
SHELL分析の各要素の説明
- Software(ソフトウェア): プロトコル、手順書、マニュアルなどのシステムやドキュメント。
- Hardware(ハードウェア): 医療機器、設備、技術的な装置。
- Environment(環境): 作業環境や職場の物理的・心理的な要素。
- Liveware(人間): 医療従事者や患者などの人間要素。
SHELL分析を使ったインシデント分析の手順
SHELL分析を使ってインシデントを分析するには、以下のステップを踏むことが重要です。
- データ収集: インシデント発生時の詳細なデータを収集し、関連するすべての要素を記録します。
- 要素の特定: インシデントに関与したSHELLの各要素を特定します。
- 相互作用の解析: 各要素間の相互作用を解析し、どの要素がどのように影響を及ぼしたかを明らかにします。
- 根本原因の特定: 解析結果を基に、インシデントの根本原因を特定します。
- 対策の立案: 根本原因に対処するための具体的な対策を立案し、実行します。
分析結果を日常業務に活用する方法
インシデント分析の結果を日常業務に反映させるためには、以下のポイントに注意します。
- フィードバックの共有: 分析結果や対策をチーム全体で共有し、全員が理解し実行できるようにします。
- プロトコルの改善: 必要に応じて、プロトコルや手順書を見直し、改善します。
- 教育とトレーニング: インシデントの原因と対策について、スタッフ全員に教育を行い、再発防止の意識を高めます。
- モニタリングと評価: 対策の効果を継続的にモニタリングし、必要に応じて追加の改善策を講じます。
P-mSHELL分析モデルとは?
次に、P-mSHELL分析モデルについてご紹介します。このモデルはSHELL分析を拡張したもので、「Patient(患者)」と「management(管理)」の要素を加えることで、より包括的なインシデント分析を可能にします。
- Patient(患者): 患者の状態や反応、コミュニケーションの状況など、患者に関連するすべての要素。
- management(管理): 経営方針、安全管理、組織の運営方法など。
P-mSHELL分析の実践例と注意点
実践例1: 病院での転倒事故の分析
背景: ある病院で、患者が夜間にベッドから転倒し、骨折するインシデントが発生しました。
データ収集: インシデント報告書や監視カメラの映像、関係者の証言などを収集しました。
要素の特定と相互作用の解析:
- Patient(患者): 患者は高齢であり、夜間のトイレに行くために自分でベッドから起き上がろうとしました。転倒の前に鎮静剤を服用していました。
- Software(ソフトウェア): 患者の薬剤管理プロトコルが存在したが、夜間のトイレに行くための具体的な手順が不足していました。
- Hardware(ハードウェア): ベッドの高さが調整されておらず、患者が自力で起き上がるのが困難でした。トイレに行くための支援器具(例:歩行器)が適切に配置されていませんでした。
- Environment(環境): 病室の照明が暗く、患者がトイレに行く道筋が見えにくかった。
- Liveware(当事者): 看護師は他の患者のケアで忙しく、患者の夜間の行動を十分に監視できませんでした。
- Liveware(当事者以外): 他の医療スタッフとのコミュニケーション不足があり、夜間の監視体制が不十分でした。
- management(管理): 病院の夜間のスタッフ配置や監視体制の見直しが必要でした。
根本原因の特定: 鎮静剤の影響でバランスを崩しやすくなっていたこと、適切な支援器具の不足、照明の不備、看護師の監視不足、そして管理体制の不備が主な要因と判明しました。
対策の立案:
- プロトコルの見直し: 夜間に鎮静剤を服用する患者に対するトイレ支援の具体的な手順を追加。
- ハードウェアの改善: ベッドの高さを調整し、トイレに行くための支援器具を適切に配置。
- 環境の改善: 夜間でも患者が安全に移動できるよう、病室の照明を改善。
- 監視の強化: 看護師の配置を見直し、夜間の監視体制を強化。
- 管理体制の改善: 経営方針や安全管理体制を見直し、夜間のスタッフ配置や監視体制を改善。
実施後のモニタリングと評価: インシデント発生後、これらの対策を実行し、同様の事故が再発しないか継続的にモニタリングしました。
実践例2: 投薬ミスの分析
背景: 患者に誤った薬剤が投与され、アレルギー反応が発生したインシデントがありました。
データ収集: インシデント報告書、投薬記録、関係者の証言を収集しました。
要素の特定と相互作用の解析:
- Patient(患者): 患者は特定の薬剤に対するアレルギーがあり、カルテにも記載がありました。
- Software(ソフトウェア): 電子カルテシステムにアレルギー情報が登録されていましたが、投薬プロセスに反映されていませんでした。
- Hardware(ハードウェア): 薬剤のバーコードスキャナーが故障しており、手動での薬剤確認が行われていました。
- Environment(環境): 忙しい時間帯であり、スタッフは時間に追われていました。
- Liveware(当事者): 看護師は新人で、経験が浅く、緊張していました。
- Liveware(当事者以外): チームメンバーとのコミュニケーション不足があり、確認プロセスが疎かになっていました。
- management(管理): トレーニングプログラムや投薬手順の見直しが必要でした。
根本原因の特定: アレルギー情報がシステム内で適切に反映されなかったこと、バーコードスキャナーの故障、確認プロセスの不備、そして管理体制の不備が主な要因と判明しました。
対策の立案:
- システムの改善: 電子カルテシステムのアレルギー情報を投薬プロセスに確実に反映させるためのシステム改善を実施。
- ハードウェアの修理・交換: 故障したバーコードスキャナーの修理または交換を迅速に行い、投薬確認を自動化。
- トレーニングの強化: 新人看護師を対象にした投薬手順の徹底的なトレーニングを実施。
- コミュニケーションの向上: チームメンバー間のコミュニケーションを強化し、確認プロセスの重要性を再認識。
- 管理体制の改善: 投薬プロセスにおける管理体制を見直し、監視とサポート体制を強化。
実施後のモニタリングと評価: インシデント発生後、これらの対策を実行し、同様の投薬ミスが再発しないか継続的にモニタリングしました。また、定期的にトレーニングとコミュニケーションの改善状況を評価し、必要に応じて追加の改善策を講じました。
結論
SHELL分析およびP-mSHELL分析は、医療現場でのインシデントを体系的に分析し、再発防止策を立案するための強力なツールです。これらの手法を活用することで、看護師はインシデントの根本原因を特定し、効果的な対策を講じることができます。具体的な事例を通じて、実際の医療現場での適用方法や注意点を学び、日常業務における患者安全の向上に役立てることができます。